故・藤戸竹喜(ふじとたけき)さんは、アイヌ民族の姿や熊などを彫った作品が高く評価され「木彫り=民芸品」という位置付けをアートへ押し上げた方のお一人です。
この記事では、2018年10月、84歳で亡くなられた藤戸さんを偲ぶとともに、2017年10月「札幌芸術の森美術館」で開催された「木彫家 藤戸竹喜の世界」を振り返りながら、藤戸さんの表現力の高さや、卓越したその技術をご紹介します。
出典:北海道ファンマガジン
北海道が生んだ木彫作家「藤戸竹喜」
藤戸さんは1934年、北海道美幌町生まれです。
旭川を拠点に彫刻家(熊彫り)として活動していた父親のもとで、12歳の頃から木彫制作を始めたそう。
80歳を超えたあとも、精力的に活動されていました。
15歳のとき、阿寒湖温泉の土産店『吉田屋』で熊彫り職人となり、その後1964年に独立。
阿寒湖畔に民芸品店「 熊の家 」とアトリエを構えていらっしゃいました。
画像は、民芸品店やアイヌ料理店などが建ち並ぶ アイヌコタンの様子です(2015年に撮影したもの)
等身大の人物像も圧巻
熊や鹿などの作品が多いなか、特に惹かれたのがアイヌ民族の等身大人物像です。
その大きさや表情もさることながら、アイヌ独特の民族衣装や祭具も見事に彫られていました。
愛らしい熊とアイヌの人々
藤戸さんが彫る熊、特に小熊の表情が好きでどれを見てもほっこり。
フクロウとネズミも発見しました。
こちらは、フチ(おばあさん)とエカシ(おじいさん)
神々しい樹霊観音像
息をのむ美しさといいますか……見た瞬間、鳥肌がたった樹霊観音像がこちらです。
エネルギッシュさと神々しさが相まって、圧倒されっ放しでした。
また、この作品展では、藤戸さんのアトリエで撮影された作業の様子を映像で見ることもできました。
木彫りの過程やカムイノミ(神への祈り)の様子など、今思えばこれまた大変貴重なものだったと感じます。
デッサンも設計図もなしに、一本の大きな木を彫り進めていく藤戸さん。
一発勝負なことに驚きですが、「まだ満足していない」という言葉にも衝撃を受けました。
他の追随を許さない圧倒的な職人芸にもかかわらず、決して驕らず優しい表情でインタビューに答えていらした藤戸さんの姿が強く印象に残っています。
アイヌ民族を先住民族と明記
法律で初めてアイヌ民族を「先住民族」と位置付けたアイヌ民族に関する新法は19日の参院本会議で、日本維新の会・希望の党を除く与野党各会派の賛成多数で可決、成立した。-引用- 北海道新聞
国の同化対策や、北海道旧土人保護法(差別を助長する根源になった法律)については、山本多助さんに関する本(アイヌコタンで購入)を読んで知ったわたし。
当時のアイヌの人々が体験した大変な苦労や偏見は、今の時代にもまだ残っています。
そうした根深い問題とは反対に、アイヌの言葉をはじめ、木彫りの技術やアイヌの人々の暮らし方、文化は徐々に失われつつあるように感じます。
これはとても悲しいこと……。
決して消えることなく後世に引き継いでいけるよう、この法案がその後押しとなることを願うばかりです。
北海道に移住していなければ、きっと気付かないままでいたアイヌの魅力。
これからもどんどん深堀りしていこうと思います。